現代のストレス社会に反映して、うつ病にかかる方が近年急増しています。その数おおよそ100万人にも及ぶと報告されています。今や誰にとっても身近な病気といえますね。
そんなうつ病、なんとなく知っている方は多いと思いますが、具体的にどういったものがうつ病と診断されるのか分からない、また、自分はうつ病ではないかと気になったことがある方もいるでしょう。もう一歩知識を深めて、うつ病についての知識を深めてみましょう。
❙うつ病とは
人間は、さまざまな状況により気分が落ち込んだり、やる気が出なくなったりする生き物です。なので、それだけで自分はうつ病ではないかと疑うのは間違えで、むしろ正常な精神の反応と言えます。
うつ病は、自分では原因がわからず、気分の落ち込みややる気のなさなどと言った苦しい状態が少なくとも2週間以上続きます。食欲・活動意欲・睡眠障害など多くの身体的、精神的症状が伴い、なかなか難しい病気です。
うつ病は、ただ単に気持ちの問題といったものではなく、脳の働きに何らかの問題が起きた状態だと考えられています。脳の中の情報を伝達する神経伝達物質が減ってしまい、それによりうつ病が引き起こされると言われています。そのため、気力で解決できるものではなく、適切な治療が必要な病気と言えます。
❙うつ病の原因
うつ病を引き起こすキッカケ(つまり、脳内の神経伝達物質が減少してしまう原因)とは何なのでしょうか?はっきりした原因はまだよくわかっていないのですが、脳内の神経伝達物質の働きが悪くなるのと同時に、ストレスや体の病気、環境の変化などの様々な要因が重なって引き起こされるとされています。原因は一つではないということです。
主な原因として下記に記します。
【遺伝的要因】
・家族、親類でうつ病患者がいる
【環境的要因
・家族や親しい人との死別
・仕事や財産の損失
・人間関係のトラブル
・家庭内不和
・就職や退職、転勤、結婚や離婚
・妊娠、育児、引っ越しなどの環境の変化
【身体的要因】
・慢性疲労
・脳血管障害
・感染症、癌、甲状腺機能の異常
・月経前、出産後、更年期
・ホルモンバランスの変化
・降圧薬、経口避妊薬の服用
このように多くの要因が考えられていますが、どれも身近なもので私たち誰もが起こりうる疾患だと認識されます。
❙うつ病にかかりやすいタイプ
誰もがかかる病気と言えるのですが、その中でもかかりやすいタイプというものがあるようです。よく聞かれているのは、まじめで責任感が強い人、ですね。他にも、完璧主義、人当たりがよく、周囲の評価が高い人もあげられます。このようなタイプの人は、自分のキャパシティー(許容範囲)と超えて頑張りすぎてしまう傾向にあり、ストレスとため込んでしまい心のバランスを崩してしまうためにうつ病を引き起こしやすいタイプと言われています。
気質的に分類すると以下のようにあげられます。
循環気質…躁状態(元気で明るい状態)と抑うつ状態(ふさぎ込んで落ち込んだ状態)をくりかえる双極性うつ病になりやすいタイプ。社交的、善良、親しみやすい反面、激しいといった面をもつ。
執着気質…責任感が強い、仕事熱心、完璧主義、几帳面、正直、凝り性といった特徴。
仕事の質は高いが、量がこなせない。仕事を一生懸命関せさせるために軽い興奮状態が続き、そのあとガクッと抑うつ状態に陥りやすいタイプ。
また、二者択一的で、白か黒か、ゼロか100がと言った選択しかできず、グレーゾーンがない。そして、優先順位を付けられないタイプでもある。
メランコリー親和型気質…常識を重んじ、常に他人に配慮を忘れず、円満な関係を保とうとし、自己の性格だけでなく、他との関係も重視するタイプ。そのため、他人の評価が大変気になり、一旦問題が起きると、悲観的になってすべて自分の責任だと考えるタイプ。
また、性別や年齢層にも傾向があり、男性よりは女性、若年よりも高齢者に起こりやすい
と言われています。女性の方がうつ病にかかりやすいのは、受診者数が多いこと、出産や月経といった女性特有の身体的特徴があること。また、日常生活の中でさまざまなイベントに関わるといったことが理由とされています。
そして、高齢者がかかりやすい理由には、配偶者との死別や社会的孤立などの環境的状況かによるものとされています。
❙うつ病の症状
先にも述べたように、うつ病の症状は単一的なものではなく、身体的な症状と精神的な症状が重なり合っています。具体的には以下のような症状があげられています。
【身体的症状】
・不眠(うつ病患者の9割以上に見られている。特に途中で目が覚めてしまう。)
・食欲がない、体重が減った
・口が渇く
・便秘や下痢、めまいやふらつき、動悸・息切れなどの自律神経症状
【精神的症状】
・落ち込んだ気分、涙もろくなる、寂しい
・物事に興味がもてない、何をやっても楽しいと思えない
・自分はダメ人間だと思い、自分は社会に必要とされていないと思い自殺を考える
・自分や周囲の環境を必要以上に否定的に捉える
これらの症状は、特に朝に起こりやすく強い。夕方になると少しラクになるということも特徴。家族は、帰宅後の様子を見て「大したことない」と誤解をしてしまうこともよくある。
【症状の目安】
・不眠は特に、数週間異常続く(途中で目が覚める、朝の目覚めがすっきりしない)
・原因のはっきりしない疲労感や身体の症状
・理由のはっきりしない退職(退学)の申し出
・女性の場合、産後や更年期に精神的不調が数週間以上続くとき
・元気な頃と違う否定的なものの見方
(弱音、行き詰まり、自分を責める言葉、面白くない、興味が持てない)
❙うつ病かも?!と思ったら…
このように、うつ病の症状は私たちが日常でよく感じるものが多いのですが、一時的なことであればそれほど心配はいらないのでしょう。しかし、長く続く場合は、自分はもしかしたらうつ病なのかもしれないと疑うことも必要です。しかし、もし疑いを持っても、「医者にかかっても何も変わらない」と否定的に捉えてしまい、適切な医療を受けていない方が多くいるようです。その結果、症状が重症化し、自殺に追いやられるといった最悪なケースも見受けられます。
もし、周囲の人がうつ病に気づいた時は、受診に否定的となることを念頭に置きつつ、専門医療の受診が勧められるよう、きっかけになりそうな話題(不眠など)を振っていくのも一つの方法と推奨されています。
増加傾向にあるうつ病。これらに気を付けて日常生活を送ってみましょう。そして、万が一疑われるときは、否定的にならず早期に専門医を受診し、少しでも心身ともに健康的な人生を送りましょう。